携帯電話と医療機器
数年前から、電車内での携帯電話に対するアナウンスが変わっているのはお気付きですか? 鉄道会社や路線によっても変わりますが、以前は「優先席付近では電源をお切り下さい」だったのが、「優先席付近では混雑時には電源をお切り下さい」といった感じになっています。今回はその理由についてお話しさせていただきます。
まず、なぜ電車内で携帯電話の電源を切らなければならないのか。これは、携帯電話がペースメーカー等の医療機器に悪影響を及ぼす危険性があるからです。ご存知の通り、ペースメーカーは心臓の拍動を正常にするための医療機器なので、これが乱れてしまったら大変です。そして、携帯電話から発せられる電波が、ペースメーカーの動きを乱れさせてしまう危険性があるため、電波を発しない状態、つまり、電源を切らなければならない訳です。
最悪の場合、携帯電話の電源を入れていただけで、近くにいた人が亡くなってしまう。これは、とても危険なことなので、平成9年に調査が行われました。国内に存在する様々な携帯電話とペースメーカーを集めて、どの組み合わせでどんな影響があるのかを調査しました。その結果、「携帯電話と医療機器は22cm以上離しましょう」というルールができました。時は流れて現代。携帯電話も医療機器も進歩しました。特に携帯電話の進歩が凄いですね。携帯電話が広く普及し始めてから20年程度だと思うのですが、皆さん、あの頃に20年でここまでくると思いましたか?(はい。私、あの頃を知っている年齢です(笑))
一昔前の携帯電話から発せられる最大出力は800mWでした。最近の携帯電話やスマートフォンから発せられる最大出力は250mWです。携帯電話用のアンテナの増加や技術革新等で、最大出力が以前の1/3程度になっているのです。「発せられる電波が弱くなれば、周りに与える影響も少なくなっているはず。でも、最近のスマートフォンとかは多彩な機能を持っているから、もしかして医療機器に対する悪い影響も増えているかも?」ということで、平成25年にも調査が行われました。
結果は「携帯電話と医療機器は15cm以上離しましょう」というルールになりました。22cmから15cmへとルールが緩くなっています。つまり、携帯電話と医療機器双方の技術革新等で、トラブルが起こり難くなっているのです。こういった理由から、電車内のアナウンスも少し緩くなったという訳です。
しかし、まだ15cmというルールがあるということは、携帯電話が医療機器に悪影響を与えてしまう危険性はあるということです。必要以上に、携帯電話等の電波を発する機器を医療機器に近づけることは避けましょう。また、体内に医療機器を植え込んでいる人もいます。満員電車などの、身体が密着してしまうような場所では電源を切りましょう。